喉の奥の20cm下で生まれた赤黒い塊は吸い込んだ臭気の中で気相成長して喉に詰まった

その時ぼくはナイフを持っていた.
15m先の男もナイフをもっていた.
ぼくはナイフを落とし笑顔を作った.

その時ぼくはナイフを持っていた.
暗闇を前に立っていた.
ふと後ろの光を振り返った.愛する人が不安そうに見ていた.
ぼくは暗闇を前にナイフを横に構えた.

その時ぼくはナイフを持っていた.
目の前の男は既に振りかぶっていた.
空の手で撥ねつけた親指と人差し指の間から熱が5cm走った.
2度目はナイフ同士が合った.合って引かなかった.
身動きできなかった.でも動かないことに納得していた.

その時ぼくは銃を持っていた.
目の前の男も.互いにすでに構えていた.
後ろを振り返りたかった.
何を守っているか知りたかった.
この身1つなら投げ出してしまいたかった.
ぼくらは目を見開いたまま動かなかった.

その時ぼくはスイッチに手を掛けていた.
相手も似たようなスイッチに手を掛けていた.
それが何なのか,起こる事態を知ってはいるが実感はないようだった.
見渡すと二人だけの部屋だった.
でも壁の向こうに,一面の人の気配を感じた.
決断を叫ばれているようでもあり,必死に落ち着かせるようでもあった.
数時間後?数日後?ぼくは両手を広げてその場を去った.目が赤く腫れていた.

途中から半分意識ありつつ創ってた気がする,けどどこからどこまでか….そしていつから見たのか.