タイカス

まず,映画として一般的に面白くない,とハッキリ断っておいて,以下進めたい.

ストーリは,,前半は元従軍記者が昔追っていた機密の情報を手に入れ,一人の科学者が10年前に隕石衝突による人類滅亡を予言したが相手にされなかったので自分で選んだ富豪中心にシェルターと隕石迎撃ミサイルを建設している,ということを知る.
後半は結局避けられなかった隕石衝突の数時間前から,科学者と主人公が未だ残る家族も保護しようと慌て出し,世間も隕石による惨事とシェルターに気付いて混乱が生じ,とりあえず主人公と数名は追加でシェルターへ戻る,,という所まで描くと話は未来を描くエピローグへ.

描きたかったのは,ごく一部しか残れない極限状態で主人公はじめシェルター側がどう葛藤に立ち向かうのか,らしいが肝心のそこは大して描かれていない.同じつまらない映画でも後の宇宙戦争の方がマシ.古い映画を漁っても,同じテーマでもっと良いものはある気がする.
しかも前半のサスペンスっぽい話が余計にありきたり感を高め,科学的にありえない設定が笑いすら呼び得る.

劇中で主人公は神様染みた計画を動かす科学者の不道徳を責めるが,逆に現実の葛藤に答えを出さない主人公が諭される.諭されるべきは監督のような気がするが,この問いにどう答えるんだろ.ラストを見る限りは科学者を前面肯定してるみたいだけど.


ラストは一事例の結果を示したのみで,正解ではないと見ると,少しは面白くなるかなぁ.この作品は問いに過ぎないと.いっそシェルターの最後の扉が閉まった時点で切ってしまえば,つまらない上に意味不明だと非難は浴びても一部からは評価されたかも知れない.


で,個人的には人類滅亡を前にした人々の行動はそれぞれに正しいと思う.だって社会道徳やら一つの正義は,常時か少なくとも想定内の非常時で成り立つことで,共有する社会を捨てたら各人の命・人生・世界・正義(なんと言ってもいいけど),それしか残らないじゃん.一つの正しい事が残るわけがない.
シェルター内ではかろうじて新しい一つの正義が成り立っても,外部に対しては科学者がどうしようが自分のために行動するのは当然.パニックを起こしてシェルターに進入しようとする人も,諦めて祈る人も,ドラッグでイク人も,そりゃ勝手でしょう.を説得しようとするのもまた自由だけど,どれが正解かをその場にいない事前や事後や視聴者に見せることはできない.
極限状態まで来てしまうと,もう選択する余地はない.できることは事前に非常時の発生確率を下げることと,対応できる非常時の範囲を拡大することだけ.