グランド・フィナーレ

蹴りたい背中』『蛇にピアス』のダブル受賞以来,
文芸春秋に掲載される芥川賞をずっと読んでる(と言っても3回目).
実は旅行の前日に買って,そのまま読まずに旅立ってしまった.
帰ってきたらそのままの状態でリビングに有って,笑った.


さて,今回の受賞作だけど,あはは…ブーイングが出るのが目に見える.
前回の『介護入門』もだいぶ評価が分かれそうだと思ったが,今回も…
共感できない,文章が美しくない,流れがスマートでない,と揃ってる.


すごく簡単にストーリーは,
ロリコン趣味で映像製作業の傍ら裏でソノ手の画像を撮って副業してた男が,
その趣味がバレて離婚して妻と娘と別れ,副業もバレて職を失い田舎え帰る.
娘への執着から再び戻るが,犯罪的な計画を知った協力者の友人に諭される.
田舎でただ時間を潰す毎日を送っていたら学校の卒業記念の劇の監督を頼まれる.
更正の兆しが見えて,話は終る.


個人的にはゲイもロリもショタも,サドもマゾも何となく気持ちは分かる方だ.
バレンタインのバンコクで結構いた花束を抱えた男の子は,素敵な光景だった.
<あまり自分にそのケが無いのはもっと好きなモノが他にあるから,だと思う.
しかし,この話はそんな楽しめない.


主人公の男は相当のロリコンなのだがその度合いがよく分からない.
醜いものは醜く描いて欲しい.正直,作者こそこの男に共感してるか謎だ.
しかも結婚してるんだから女に通常の興味もあるはずだがその度合いも分からない.


会話の中で,本流とは離れた話題が出ることがある.
それも,どうも真面目に長く書く割に本流への必然性が見られないので浮く.
主張や時事性が強い割に人物の理解があまり深まらないのが痛い.

受賞から時間も経ったし,こんな感想がたくさん転がってるんじゃないか?
でも,つまらない,とは思わなかった.
感動はできなくても,次のページを読む気にはなれた.
不満を覚えながらも,言葉による表現の新しさへの挑戦は見えた.


ノミネート作を読んだわけでは無いので相対評価はできないが,面白いんじゃない?
芥川賞って,どうもその辺を楽しめれば,面白いんじゃない?
この賞の歴史も権威も知らないが,そんな印象を持っている.